栄二ー!!それは兄の名前だった。
兄の死を悟った。
『竜一郎・・・・おまえの兄の栄二が死んじゃった・・・・ウゥッ・・・お母さん・・・・悲しいよぅ・・』
『そんなぁ!!・・・くそぅ・・・俺が・・・ぐずった俺が・・・ばっかりに。』
『ぐずった俺が何で生き残ってるんだよー!!!』
私は戦地にいながら既に帰国を終えていた。
そうそれは戦時中、第二次大戦が勃発している最中の事だった。
(ヒュードンドンドン、ボカーン‼︎)
『くそぅ!俺が怪我したばっかりに。足を骨折したばっかりに。
当時、
当時のヘリの翼は力が弱く、
時折、その回る勢いは強く怪我をする物が後を絶たなかった。
そして、私はヘリコプターというより自分の着地に失敗し、
『っ痛ぇ〜!!!』
『貴様ぁ〜!!何してる!それでも軍人かぁっ!!』(バシッバシッ!)
そう教官に否され、すぐに私は休憩キャンプに運ばれた。
『俺はバカだなぁ(グスッ)なにやってるんだ・・・』
そんな自尊心が下がった時に救ってくれたのはいつも兄だった。しかし、帰ってすぐ数日後の事だった。
兄はニューギニアで亡くなった。アメリカ人に機関銃で腹部貫通死。即死だった。その時、
私はそれが知りたくてたまらない気持ちになり、
それ以外は何もなかった。それが私の生涯に渡る生きがいだったのかも知れない。
兄貴ともっと居たかった。兄貴ともっと遊びたかった。
・・・
・・・
・・・
そうだ!
もし自分にこれから子供や孫が産まれたら兄貴の名前を付けよう。
そして将来、笑顔の絶えない家庭を築いていこう。
そして、そのまま時は70年経つ。
『こんにちは。・・・私は、竜一郎と申します。』
丸みを帯びた優しい住まいを感じさせるそんな老爺がそこに立って
婆『知ってるよ〜、もうボケちゃってんだから(ニコッ)』
男『はいよー(笑み)』
笑いながらも、
爺『私が20代の頃、
再び老爺が語りかけた。
婆『もう今日、6回も聞いたよ〜!ったく(笑)』
続けざまに
爺『俺みたいなどうしようもない男が生き残っちゃって、、、』
『おじいちゃん明けましておめでとう!』
そこに弟が現れた。
爺『おたく、だれ?』
弟『やだなぁ、栄二だよ〜(笑)』
爺『栄二?聞いたことある名前だなぁ?』
婆『もうおじいちゃんったら、ボケちゃってるんだから(笑)』
アッハッハー!ハッハッハー!(一同)
そんな爽やかな笑い声が部屋中を家中を、
爺『ちょっとトイレ行きたい。』
婆『あいよ(笑)』
トイレの入り口まで付き添い、
トイレのドアを開けるとそこに、
婆『ゆっくり座ってよ。』
竜一郎『いいか!押すなよ、押すなよ!絶対にいいね押すなよ!』
婆『今月それ7回も聞いたよ!ったくもう(笑)』