焼け野原 編集

栄二ー!!それは兄の名前だった。
兄の死を悟った。そしてそれは間も無く知らされる事になる事を知った。

『竜一郎・・・・おまえの兄の栄二が死んじゃった・・・・ウゥッ・・・お母さん・・・・悲しいよぅ・・』

『そんなぁ!!・・・くそぅ・・・俺が・・・ぐずった俺が・・・ばっかりに。』

『ぐずった俺が何で生き残ってるんだよー!!!』

私は戦地にいながら既に帰国を終えていた。
そうそれは戦時中、第二次大戦が勃発している最中の事だった。
(ヒュードンドンドン、ボカーン‼︎)

『くそぅ!俺が怪我したばっかりに。足を骨折したばっかりに。なんで俺はそんなんで済んで無事なんだよー!』

当時、補給拠点であった中国のとある場所で私はヘリコプターの整備やプロペラを回していた。
当時のヘリの翼は力が弱く、自ら自分達で力を加えてその勢いで回る仕組みが主流であった。
時折、その回る勢いは強く怪我をする物が後を絶たなかった。

そして、私はヘリコプターというより自分の着地に失敗し、足を強く打ち骨折した。

『っ痛ぇ〜!!!』

『貴様ぁ〜!!何してる!それでも軍人かぁっ!!』(バシッバシッ!)

そう教官に否され、すぐに私は休憩キャンプに運ばれた。
そして途端に帰国を勧告された。

『俺はバカだなぁ(グスッ)なにやってるんだ・・・』

そんな自尊心が下がった時に救ってくれたのはいつも兄だった。しかし、帰ってすぐ数日後の事だった。
兄はニューギニアで亡くなった。アメリカ人に機関銃で腹部貫通死。即死だった。その時、兄は何を思ったのだろう。

私はそれが知りたくてたまらない気持ちになり、兄の事を思い出すしかなかった。
それ以外は何もなかった。それが私の生涯に渡る生きがいだったのかも知れない。

兄貴ともっと居たかった。兄貴ともっと遊びたかった。兄貴ともっと話がしたかったのに。
兄貴を救えなかった自分が情けなかった。

・・・

・・・

・・・

そうだ!
もし自分にこれから子供や孫が産まれたら兄貴の名前を付けよう。
そして将来、笑顔の絶えない家庭を築いていこう。

そして、そのまま時は70年経つ。

『こんにちは。・・・私は、竜一郎と申します。』
丸みを帯びた優しい住まいを感じさせるそんな老爺がそこに立っていた。

婆『知ってるよ〜、もうボケちゃってんだから(ニコッ)』

男『はいよー(笑み)』
笑いながらも、あたかもそれを知ったような感じで私も微笑みかけた。

爺『私が20代の頃、兄貴がニューギニアで戦死しちゃったんだよ』
再び老爺が語りかけた。

婆『もう今日、6回も聞いたよ〜!ったく(笑)』
笑いながらも優しく言い放った。

続けざまに
爺『俺みたいなどうしようもない男が生き残っちゃって、、、』
ボケ老人は笑いながら語りかける。

『おじいちゃん明けましておめでとう!』
そこに弟が現れた。

爺『おたく、だれ?』

弟『やだなぁ、栄二だよ〜(笑)』

爺『栄二?聞いたことある名前だなぁ?』

婆『もうおじいちゃんったら、ボケちゃってるんだから(笑)』

アッハッハー!ハッハッハー!(一同)
そんな爽やかな笑い声が部屋中を家中を、そして家族の心を浄化させた。

爺『ちょっとトイレ行きたい。』

婆『あいよ(笑)』

トイレの入り口まで付き添い、婆はボケ老人を速やかに移動させた。
トイレのドアを開けるとそこに、洋式便座が座れる形で開いていた。

婆『ゆっくり座ってよ。』

竜一郎『いいか!押すなよ、押すなよ!絶対にいいね押すなよ!』

婆『今月それ7回も聞いたよ!ったくもう(笑)』