それは日曜日の朝9時。

『シーソーゲーム!恋はエゴとエゴの!シーソーゲーム!イェー!エェー、エー!』
それは大人気の歌手グループ、Mr.childrenの曲を歌っている声が聞こえて来た時の事だ。

気持ちイイッ!気持ちがイイッ!
その声の主からは、そんな雰囲気が感じ取られた。
『勇敢な恋の歌っ!』

『ええぃ!鬱陶しい!』
私はそんな勇敢な戦士のごとく雄叫びを上げた!
何度も何度も、それも大きな雄叫びを。しかし、それは虚しくも届かない。

なぜならそれは心の中で叫んでいたからだ。
またしても今日、お隣さんからの生活音が漏れた。私は耐えた。ただただ無言だが、心の中で叫びたがるその苦しみに耐え戦った。

『そばにいたいよぉ〜』
今度はドラえもんの主題歌である、ひまわりの約束が再生された。

『そばにくんなよっ!!』

お隣『ねっ?歌ったでしょ?どう?』
何やら誰かに囁いている声がした。

女『うん、いいんじゃない?』
どうやら隣人の彼女の声が聞こえて来ている。

お隣『ああー、気持ちイイーッ!』

『気持ちよくねぇよ!っかうるせぇし!』
私は度重なるその行為に苛立ちを覚えて、私は遂にその怒りの爆発ボタンを手に触れたのだった。

ポチッ!

『あれっ?ここって2人以上で住む事って可能でしたっけ?そういう契約でしたっけ?』

『それに朝から変なうるさい歌も聞こえるし、こっちにとっちゃいい迷惑ですよっ!もういい加減にしてもらえませんかねっ!』

・・・。

はい、わかりました。

管理会社『伝えておきます・・・』

それは先程の様な元気で明るい声ではなく、やけに冷静で落ち着き、安定感のある声だった。電話口からでもその平静さは伝わってきた。

管理会社『それまでちょっとお時間数日ですが、待ってて貰えますか?』

何とかその怒りを当の本人にではなく、管理会社に胸の気持ちを訴えかけた。
そしてその怒りを表現した後、1週間もすると、お隣さんからの生活音はなくなった。

それは大きく揺れるシーソーが止まった瞬間だった。
今まで揺れに揺れたキコキコとうるさいシーソーの音が、その天秤がゼロに戻っていた。

そして、まっ平らな無音状態へと戻った瞬間でもあった。
そう、私はそのシーソーゲームに勝利したのだった。

『勝ったぞ!ハッハッハッハッハー!』
『さぁて寝るかー!』

私は勝利を確信し、気持ちのいい眠りへと着いた。

『ガッハッハッハッ!!!負けたーー!!!』

それは夜中の2時の事である。
またもその声は木霊した。

よく聞くと、今度は反対側の壁の方から聞こえてくる声だった。

声の主1『俺の戦略にひっかかったな!』

声の主2『ガッハッハッハッ!!、負けたーー!!!』

何やらポータブル機器なのか、テレビを通してなのか、
それらは家庭用ゲーム機なのは間違いない。

それを使って戦い合っている、お隣さんとその友人が住んでいる。声だけだが、とても楽しそうな雰囲気が感じられた。

私『なんだよ!今度は反対側のお隣さんかよっ!』

私はその叫び声と同時に目が覚め、今まで戦ってきた日常にまた戻された気がした。

『『カーン!』』
ゴングの音が鳴り響いた。
それは同時に闘いの合図でもあった。

そして、この永遠なるシーソーゲームから降りる日は決してこなかった。

『ええぃ!鬱陶しい!』

 

桜井和寿
『いいか、お前ら!押すなよ、押すなよ!絶対にいいね押すなよ!』

『過ちを繰り返す人生ゲーム、シーソーゲェェーーーム!!!』

シーソー①