F1のような素早い爽快音がゆっくり流れるような感じがした。

『私が行ってくるから、お兄ちゃん待っててね!』

ピーポーピーポー。

その音はしばらく音量が下がりながらも私達に存在を知らしめていた。
兄が帰ってきた。

兄『どうしたの?2人だけ?』

弟『・・・』
弟は俯きながらにそう答えた。

私『お父さんが倒れて、救急車に運ばれちゃったんだ!』

兄『えっ?』

私『とりあえず、お母さんからの通知を待とう。』

いつも3人でよく見て笑っていたTVが音を発しなくなっていた。
そしてしばらく経った時の事だ。
一通の着信音が流れた。

テレレレー、テレレレー、テレレレーレーレーレーレー

聖者の行進曲でベル着信音が鳴った。
電話に出た兄はなにやら、不安げな表情で
『うん、わかった』と言った。

すぐに3人でタクシーに乗り、病院へと急いだ。

母『お父さんが、、、お父さんが、、、』

『お父さんが死んじゃった、、、』

シーン。。。。

意味がわからなかった。そして同時にその意味を知りたくなかった。この世の終わりなのか、自分には理解不明であり、痛覚がなくなるほどの絶望を覚えた。

(えっ?)

頭ではわかっている。そして頭で解りたくない。それを信じる事が怖かった。
何か自分には起こらないよ。絶対に起こるわけないじゃん(笑)と言った確信が崩れた瞬間だった。
身震えするような感覚、落ちる寸前の断崖を見る、それを味わうかの様だった。

『ウゥ、、、』

弟が泣き出した。

同時に無意識で家族全員が泣いた。
泣いた方が正しいとかではなく、泣く意味を知る必要も泣く、溢れんばかりの感情が吹き出した瞬間だった。

それを感じ切っていると、何かの気配を感じた。

少し遠くで女2人が悲しいのかはたまた他人事の様な何かを思う形でこちらをじっと見ている。
その視線に気が付き、私はその女を見ている。

そして女達を、私は目で追っていた。
見るな!と睨めんばかりに。ジロリジロリと。

しかし、彼女達は目をそらす事は無かった。私はもう絶望し、諦めを覚えた。
足も泣き崩れ、手は床の上。天井のライトに目をやり、やがて私は目を閉じた。

目を閉じた。

そして、嫌々ながら目を開けてみると私は再び女達をジロリと見ている事に無意識に気付いた。

そこは渋谷のツタヤ前であった。
次々と通り過ぎていく女達を。歩いていく女達を。
そんな女達をひたすら目で追う作業が始まっていた。ただそんな日常が始まりかけていた。

『いいね~!』

私は女性たちにある豊かな何かを、決していやらしい目ではなくそれを感じたいが為にしたかった。

そして、その豊かな感じを覗いていくと服の下から膨らむ何か突起物を感じた。

女性たちにもその膨らみを求めると、胸にある豊満な豊かさを求めたくなり、不思議とそれを押したくなってきた。

女ども『いいか!押すなよ、押すなよ!絶対にそのいいね押すなよ!』

ポチッ!とな

1時間後。

ピーポーピーポー

ドップラー現象がそこには響き渡っていた。