『ねぇ、お母さん?』
『えっ?何?』
『お母さんは僕の事、何番目に好きー?』
チャプン。天井から水が滴り落ちた。
温かい湯気が立ち込み、辺りが白い蒸気に包まれている。
母『え?なんで?』
少年ヒカリ『いいじゃん、知りたいんだもん!』
ジャバジャバ。
体を縦に揺らしながら少年はそう言った。
そこは温かい風呂場だった。
ヒカリ『お母さんは僕の事、何番目に好き?』
母『3番目よ!』
ヒカリ『えー!なんでー?』
母『だって1番目はお父さんでしょ?2番目はお兄ちゃんだから』
ヒカリ『ヤダヤダ、ヤダヤダヤダ!』
ヒカリ『絶対に僕が1番がいいっー!』
母『そんな事言わないでよ、
母『だからあなたは3番目よっ』
ヒカリ『ヤダヤダ、ヤダヤダヤダ!』
ヒカリ『絶対に僕が1番がいいっー!』
母『もうしょうがないなぁ・・・』
母『じゃあこれは2人だけのヒミツだよ?』
ヒカリ『うん』
母『じゃあ、ヒカリちゃんだけ特別に2番にしたあげるっ』
ヒカリ『やったー!お母さんありがとう!』
母『一緒にお風呂入ろうか?』
ヒカリ『うん!』
お風呂場と共に心も身体も温まりそうな、
それは温かい優しい光に包まれ、
★
そんな可愛らしい少年も10年が経ち、
ヒカリ『ただいまー!』
母『おかえりー!』
学ランを着た青少年が、部活動から帰ってきたばかりの事である。
ヒカリ『お腹減ったー、ご飯まだー?』
母『もうちょっと待っててね』
母は夕食の準備中。
青少年はそこから離れテレビゲームやらを兄弟と遊び始めていた。
ヒカリ『負けたー!』
ヒカリ『もういいや、1人で遊んでて』
兄弟から離れ、再び台所にいる母の方へと近づいた。
母『さぁーて、急がないと』
そんな事を言って、野菜やら生魚を切っている。
ヒカリ『もうちょっと掛かりそうだな・・』
母の様子を見てからそう思い、
『キャア!!』
青少年は母の方を振り返った。
母親の指からは血が出ている。
母『あ痛っ、指、切っちゃった』
途端に母は傷の箇所を指で洗い流し、
青少年は近くにあったバンドエイドとガーゼを母の傷口へと当てた
母『ありがとう』
なんだかヨタヨタしながら、両手で傷口を抑え、
母『・・・ヒカリちゃん、そこのタオルを取って・・・』
青少年はテーブルにあったハンドタオルを母の手に渡し、
ヒカリ『大丈夫?』
母『はぁ・・・』
すると、母は気を失った。
壁にもたれながらもゆっくりと崩れ落ち、
目は閉じるが、口は開いたまま。
そんな弱った母の姿を目の前にし、
『お母さん、僕にとってお母さんは永遠に1番だからね。』
すると、母親は目を覚ます。
『・・・』
『あっ、なんだヒカリちゃんか、ありがとう!』
やがて互いの手には温かな穏やかな温度が増し、
それは優しい愛へと変わり、光溢れる世界へと包まれていった。
『いいかお前ら、押すなよ!押すなよ!絶対にいいね押すなよ!』
そして、更に10年後の事。
やがて青少年は青年になり、3ヶ月間の海外留学へ行っていた。
そこから帰ってきたばかりの話である。
ヒカリ『ただいまー!』
母『あら、お帰りー^^海外留学は楽しかった?』
ヒカリ『うん、とても楽しかったよ!』
母『そうー、それは良かったわねぇ!
ヒカリ『うん、それで実はぼく、
母『なに・・・どうしたの?』
ヒカリ『お母さん、じつは僕、、、彼女が出来ちゃったんだ』
母『・・・』
母『あら、本当にー?おめでとうー!良かったわね!』
ヒカリ『うん、ありがとう』(ニコリ)
ヒカリ『それで彼女、
母『・・・』
ヒカリ『?』
・・・・・・・・・
母『ヒカリちゃん、、、』
ヒカリ『えっ?』
母『私って、、、何番??』