カチッ、カチッ、カチッ
日が暮れた夜7時のこと。
路上で三浦という成人男性が何かを数える音に集中している。
カチッ、カチッ、カチッ
それと同時に右手の親指でカウントする行為を行っていた。
そこは新宿西口交番前。
三浦は何かを見る目で、その目で、人々の目を追っていた。
カチッ、カチッ、カチッ
何度も、何度もカウントを行った。
ふと右手に持ったカウンタを見てみると、
『こんなにいったのか!』
三浦は驚いた!自分のした行為と同時にその愚かさに。
『暇人だなー!』
三浦はそのような何かを、
カチッ、カチッ、カチッ
あたかもその人数も数えるかのように。
三浦は再び動き出した。
またとない日常へと。
三浦『どうもこんにちは〜、お疲れ様です。今日は良い一日でしたか?
女『・・・』
無言。何度も無言が続いた。そして何度でも沈黙が続いた。
『まぁいいか。』
そう思い、自分の気持ちを誤魔化した。
『お疲れ様で〜す!』
すると、三浦の背後から一人の男に声を掛けられた。
三浦『おおっ!どうも!』
米田『今日はどんな感じですか?』
彼とはこれが初対面であった。
三浦『いやいや、全くですよぉ〜』
米田『ボチボチでんなぁ〜』
傍から見ると何故か意気投合したような雰囲気が感じられる。
それもそのはず、何故なら2人はナンパ仲間募集掲示板というインターネットサイトを通じて出会ったからである。
三浦『じゃあ行きましょうか』
米田『ええ!』
2人は予め決まってあるかのように立ち振る舞い、落ち着いている。
そう、既に彼らはナンパ経験者である。少ない会話だけでありながらも2人だけの世界観の会話が繰り広げられていた。
そして、新宿地下交番から地上への階段を駆け登りながら、
三浦『どこでやりますか〜?』
米田『そうですね〜、お任せしますよ』
2人は西口から反対側の東口へと移動する為、
そして、新宿アルタ付近にある喫煙所で足を止めた。
『ここでどうですか?』
と三浦が言う。
『えっ?ここですか?
『だから良いんじゃないですか~』
三浦は慣れた様子で微笑みかける。
『・・・しょうがない、とりあえずやって見ますよ』米田はそう指示され、すぐさま体を動かし目の前を通過する女性へと歩き出した。
『すいません?』
米田は先程までとはうって違った表情で女性に声を掛けた。
『なんですか?』
女は怪訝そうな感じで男の目を見て、振りほどいた。
米田『あっ、ちょっ!・・・まぁいいか』
三浦『はやっ!声掛けんの早いですね!』
米田『まぁ声掛けるのだけはできますよ、後はその後ですかねぇ』
・・・
・・・
・・・。
すぐ隣ではガードレールに寄りかかりながらもその行為に、首をかしげこちらを見ているキャバ嬢が2人。
(これってナンパ?)
そしてすぐさまその疑いは、空中の何処かへと浮かんで消えていった。
カチッ、カチッ、カチッ。
その女達も何やら男を見定めるかのように瞼を閉じたり、