①自由空間①

『おい、お前!何やってんだ!』

その時、ふと我に返った。
目の前には怒った形相で担任の先生がこちらを見つめている。

先生『お前は一番前の席にいるのに何で解らないんだ!』
理由は解らないが、解りたくなかったのかもしれない。

私『は、はい・・・』

先生『まぁいい、えーじゃあ次の人!』

先生は視線を変え、別の生徒を指差した。
私は焦った。普段の楽しい生活を楽しんでいたのに。
あたかもそれを楽しむ事がいけない事のように思えた。

私はぼんやりしていた。
それが日常と化し、学校生活や仕事などの普段やってはいけない場所で妄想のような世界に浸る事を癖付けていた。

そんな時。
先生『えー、はい君!』

私『えっ?』
私は再び焦った。

私『すみません、解りません・・・』

先生『君は何度言ったら解るんだよっ!ったくしょうがないなぁ~
そう言い、先生は再び別の生徒を指差した。

(まずい・・・)

このままでは授業に遅れが生じる。
このままではテストに響く。
このままでは親に叱られる。

父『おいお前!何やってんだ!』

私『はいっ!』

私はその時、作ったばかりの飛行機のオモチャを手に持ちながら
『ブーン!ブーン!』
と手にし、楽しそうに遊んでいた。

父『せっかく作ったのに何してんだ!』

ピシャッ!

私は訳も分からず父に頬を叩かれた。

私『痛い!』

私は跪き、片方の手で頬を押さえて、もう片方の手で床を触った。
するとどうだろう。

床についた手にはなにかがヌルっとした感触がそこにはあった。

『なんだ?』

私は下を覗くと、そこには綺麗にビッシリと切られた刺身がバラバラに溢れ、大皿倒れ、辺り一面がツマだらけになっていた。

ふと、私は我に返った。

『あっ!僕がこぼしたのかっ!』

私は楽しい自分だけの世界が何者かに邪魔され、ようやく現実世界に反転した時の事だった。

『なんだぁ、こんな日常かぁ。』
私はこんなつまらない日常から離れたかった。刻々も忘れたかった。

自分の中にある自分だけでしかない空間。部屋、居心地良さ。そんな物を味わうが為に無意識の内に自分の世界へ浸ろうとしていた。

なんとも言えない社会不適合者なんだと。自分ではそう思った。

が、しかしどうするにも、どうこうするにも自分ではそれが辞められない。止められなかった。

この抑えきれないもどかしい思い、感情、感覚それらを全てこの世界に現実に定着させたい。
そんな思いを持って生きてみた今日此の頃である。

出川『いいか、お前ら!押すな!押すなよ!絶対にいいね押すなよ!』

出川『かっこ悪いんだよ、お前は!』