しかし、彼女には行って欲しくなかった。
それと同時にそれは言って欲しくなかった。

彼女『あれっ、あれっ?携帯どっかやっちゃった・・・』

なぜなら彼女は以前に惚れた相手と瓜二つだったからだ。

私は彼女に携帯番号を求めた。
それと同時に彼女にも求められていたのを感じたからだ。

しかし、正直に言い出せない。
怖くて恥ずかしさがこみ上げてきた。
私は正直、彼女の事を惚れていた。

見た目のルックスに関わらず、彼女に惚れていた。

雰囲気や見た目なんかではなくて、このなんというか心が痒いのか
くすぐられているというのか。それを感じる自分が怖いのだ。
感じてしまうと、自分が自分で無くなる。何が自分で何で自分なのか。

意味が解らないようだけど、本当に意味が解らない。
これじゃあまるでお手上げだぁ!

ここから逃げ出したい、じゃあ逃げ出そう。そんな思いだった。
だが、ここは俺も男だ。そっちが駄目ならこっちで行く。

私は自分のバックからたまたまあった紙とペンを使い、走り書きをした。
あまりにドキドキして何が起こってるのか一瞬、気を失いかけた。
自分の意識が気付くとふと、自分の電話番号を書いたメモが出来上がった事に気付いた。

私『はい、じゃあ良かったら、ここに今度電話してね!』

彼女『はい、じゃあまたね^o^』

とてつもない笑顔と女性らしい仕草に私は心ときめいた。
彼女はすぐ目の前にあった地下鉄の入り口まで歩き、2回振り返って手を振った。
私は彼女が階段を下りきるまで見送った。

素敵な感情が芽生えた。

『可愛い!』

顔を見ただけでこんなにトキメキが起こるのだろうか?
私はルンルンだった。

『やったぞ!これはイケる!』

それと同時に確信に変わった。
彼女も気がありそうだ、何とかいけるだろう。

そして私はJR駅に向かって歩き出した。

先程まであった情景が夢のようだ。
たった数分前にあった出来事なのに何故だろう?

時間の感覚が無くなり、その子と一緒に歩いた道が別世界のように感じ華やいで見えた。

しかし、今ひとりで歩いてるのはただの道に過ぎない。
この感覚は一体なんだろう。
周りの景色が、人々が掻き消され、2人だけしか存在しない空間。

そして、普段は大人しくて穏やかな性格が一変し、
彼女といるとなぜだか強気で自身に溢れた性格へと豹変していた。

素晴らしい!こんな日々が毎日でも続いたら良いのに!
ふと、先程の彼女の事を思い出す。

私『あれっあれっ?携帯番号がどっかにいっちゃった』

そうなのだ!正にそうだった。
私は彼女に電話番号を伝えたはずだったが、自分の電話番号の最終4ケタをその時忘れていた。

私『あっ!、ヤベェ!緊張しすぎて本当に自分の番号書いたか覚えてねぇ!』

・・・

・・・

私『マズイッ!』

なぜだか、最終4ケタだけ違う数字を書いてしまった様な気もするし、しない気もする。
しかもその確信もないまま。

私は帰宅した。

あわや、一触即発!
自分の触れてはいけない記憶に触れた時だった。それを思い出した自分を後悔した。
共にどうしたらいいのかわからないままになった。

私はその記憶を掴みながら、日にちが経過するのを待った。
そしてそれは確信した、彼女は私に連絡するということが無いことを。そしてこれからも。

ジーッといつ連絡が来るのかを待ち望んでいるかのように携帯を見つめていた。
私は連絡が来ることが無いのを知っているのに心の何処かで彼女が来るのを待っていたのだ。

ジーッと携帯を見つめていると、
それはついに現れた。

ジーッと相手の目を見つめていた時の事だった。

私はその目を見つめた。
相手も私の目を見つめていた。

その瞬間、何かが繋がった気がした。
目は揺らぐ不快な地震を見ることなく、深い自信を見た。

私は彼女の目をグッと見つめながらも、2回頷いた。
さらに彼女も驚いた事なく、私を見つめ返したままだった。

時間の感覚が無くなり、何かあった雑音が消え、はたまたぶつかり合ったのだろうか?

音が音と無くなり、無になった瞬間だった。
そうそれだ!その言葉が一番ふさわしい言葉なのだ!

そうそれは、互いの波長が混ざり合ったのだ。
そこには深い安心感のような物を感じた。
私はその時、何かを思い出そうとしていた。

しかしその瞬間、彼女は立ち上がり移動していった。
その時、既にもう感じていたのかもしれない。

まるでその彼女と再会したようだった。
今回起こった彼女には何かを感じた。

次第に彼女と連絡を取るようになるも、なぜかぎこちない。

私は恐れた。自分を恐れた。
自分はなぜこんな美人で素敵な女性と連絡がとれているのだ?

・・・

ええい!そんなの必要ない消してしまえぃ!
私は彼女をからかい弄んだと同時に彼女を怒らせた。

彼女『どうして私はあなたと真剣にむきあっているのに、あなたは人のせいにするの?
今まで色々と頑張ってきたじゃない!』

彼女『あなたの純粋な所、その真面目さが私は好きだったのに・・・』

彼女『そんな事をするのならもう私はあなたにも会わないし、連絡も取りません!』

私は本当は好きだったのに、本当に彼女の事が好きだったのに・・・。
どこか他人の言葉で彼女と連絡を取り続け、私は彼女を酷く傷付けた。

そして、年月は経ちなぜかどこかで彼女達の面影を感じた。
私は以前の彼女の事を思い出した。

私『彼女は、本当は、携帯を持っていたんじゃないか?』

私は悟った。私は彼女に向き合うのを恐れた。
それと同時に以前の彼女も、私に向き合う事を恐れていたのだ。

一体、この現実はなんだ?

嗚呼、あの頃に戻りたい。
戻って彼女に電話して伝えたい。

私『あれっ?あれっ?でもその携帯どっかやっちゃったなぁ。』

彼女達『いいか!押すなよ、押すなよ!絶対にいいね押すなよ!』